運動をしているとき、「これってきつすぎるかな?」「自分に合った強度でできているだろうか?」と感じたことはありませんか?運動中の負荷や強度を正確に把握することは、パフォーマンスの向上や怪我の予防にとって非常に重要です。しかし、最大酸素摂取量の測定や血中乳酸濃度の測定といった高度なデータを得るには専用の機器が必要で、誰もがすぐに活用できるわけではありません。
そこで注目されるのが「自覚的運動強度(RPE: Rating of Perceived Exertion)」という方法です。本記事では、ランニングを研究している理学療法士の視点から、RPEの中でも特に「ボルグスケール」に焦点を当て、その種類や活用法、メリットについて解説します。
ボルグスケールは、運動中の主観的な「きつさ」を数値化するツールです。従来型の6~20の範囲で評価するものや、シンプルに改良された「CR10スケール(0~10)」といった種類があります。これらを活用することで、感覚的な評価に基づいて運動強度を調整することが可能です。特にCR10スケールは直感的に使いやすく、ランニングだけでなく幅広い運動に適応できます。
ボルグスケールを導入することで、例えば以下のようなメリットが得られます。
- 運動中の適切な負荷管理が可能になる
- 疲労やオーバートレーニングの防止につながる
- 簡単でコストがかからないため、初心者からアスリートまで誰でも使える
RPEを活用すれば、自分の体と向き合う新たな視点を得られるでしょう。
ボルグスケールとは?
ボルグスケールは、運動中の「きつさ」や「疲労感」を主観的に評価するための指標です。スウェーデンの心理学者、グンナー・ボルグによって開発されました。このスケールの最大の特徴は、特別な機器を使わずに、自分の感覚だけで運動強度を把握できることです。運動中の疲労感や呼吸の乱れ、筋肉の疲れ具合などを総合的に判断し、「今の運動はどれくらいきついか」を数値で表すのがボルグスケールの基本的な使い方です。
ボルグスケールの種類
ボルグスケールには、主に以下の2種類が存在します。それぞれの特徴を理解し、用途に応じて使い分けると良いでしょう。
6-20スケール(元祖ボルグスケール)
ボルグスケールの初期モデルで、6から20までの範囲で運動強度を評価します。このスケールは、心拍数との相関を考慮して設計されており、数値に10を掛けることで心拍数をおおよそ推定できます。例:RPE 13(「ややきつい」)の場合心拍数は約130 bpmと推定されます。この推定はあくまで目安ですが、機器を使わなくても心拍数の管理が可能です。
6-20スケールの主な基準
- 6:全くきつくない(安静状態)
- 13:ややきつい(会話が可能なレベル、有酸素運動の範囲)
- 20:限界のきつさ(全力での努力に近い状態)
下記の表は実際の6-20スケールです。このスケールは運動強度をより細かく評価できるため、トレーニングにおける強度調整に役立ちます。
ボルグスケール | 内容 |
---|---|
6 | |
7 | 非常に楽である |
8 | |
9 | かなり楽である |
10 | |
11 | 楽である |
12 | |
13 | ややきつい |
14 | |
15 | きつい |
16 | |
17 | かなりきつい |
18 | |
19 | 非常にきつい |
20 |
CR10スケール(改良版)
よりシンプルに改良されたモデルが、CR10スケール(Category Ratio 10)です。評価の範囲が0から10と短くなり、直感的に使いやすくなっています。また、心拍数との相関に縛られず、運動中の感覚そのものに焦点を当てています。
CR10スケールの主な基準
- 0:全くきつくない
- 5:きつい(集中が必要な強度)
- 10:最大限にきつい(持続不能な負荷)
CR10スケールは、初心者や高齢者、または心拍数測定機器を使わないトレーニングに特に適しています。ランニングやフィットネスだけでなく、リハビリや運動療法の現場でも広く活用されています。
ボルグスケールの利点
ボルグスケールを取り入れることで得られる利点は次のとおりです。
簡単で手軽
特別な測定機器が不要で、自分の感覚だけを頼りに評価できます。これにより、誰でも簡単に運動強度を管理できるようになります。
個人差に対応
体力やフィットネスレベル、さらにはその日の体調に合わせて評価できる点が大きな魅力です。同じ運動でも、初心者と上級者では「きつさ」の感じ方が異なりますが、それぞれの主観に基づいて正確に強度を測定できます。
安全性の向上
RPEを参考に運動強度を管理することで、無理なトレーニングを防ぎ、怪我やオーバートレーニングのリスクを軽減できます。
ボルグスケールの活用例
実際にトレーニングにボルグスケールを取り入れる際の活用例を紹介します。
ランニングでの使用
- ウォームアップ:RPE 6~9(軽いジョギング)
- 有酸素運動:RPE 12~14(「ややきつい」ペース、長時間持続可能)
- インターバルトレーニング:RPE 17~19(「非常にきつい」全力疾走を数分間)
- クールダウン:RPE 6~9(軽いウォーキングやストレッチ)
日常のトレーニング記録に使用
トレーニングごとにRPEを記録しておくと、自分の疲労度や運動のパフォーマンスを把握しやすくなります。例えば、同じRPEでも以前より速く走れている場合、持久力が向上していることがわかります。
まとめ
ボルグスケールは、運動中の疲労感やきつさを主観的に評価できる便利なツールです。元祖の6-20スケールと改良版のCR10スケールのどちらも、それぞれの特徴を活かして使い分けが可能です。簡単で手軽、そして個人差に対応できるボルグスケールを活用すれば、自分に合った運動強度を見つけ、安全かつ効率的にトレーニングを進められるでしょう。
日々の運動にぜひ取り入れてみてください!
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