「しっかり練習しているのに、なぜか同じ部位を何度も痛めてしまう」「休めば一度は良くなるのに、走り始めるとまた違和感が出る」
そんな経験はありませんか。
多くのランナーは、ケガの原因を「筋力が足りないから」「柔軟性が低いから」といった身体機能だけの問題として考えがちです。
もちろん筋力や可動域は重要です。しかし、それだけを改善しても、ランニング障害が繰り返されるケースは少なくありません。
なぜなら実際のランニング障害は、走動作の繰り返しによって特定部位に力学的ストレスが集中することで起こるからです。つまり、身体を鍛えるだけで、走り方が変わらなければ同じ負荷はかかり続けるということです。
本記事では、ランニングを研究している理学療法士 × ランニングアドバイザーの立場から、論文に基づき「ランニング障害がなぜ起こるのか」「どこを見て、どう予防すべきか」を走動作の視点で整理します。
結論はシンプルです。
ランニング障害の予防と再発予防の鍵は、走動作を理解し、好ましい走動作を持続できる身体をつくることです。

この記事を読むことで、闇雲なフォーム修正やトレーニングから抜け出し、ケガなく走り続けるための“考え方の軸”が手に入ります。
STEP 1:ランニング障害は走動作の「結果」である

ランニング障害の多くは、転倒や一度の強い外力によって起こるものではありません。
同じ走動作の反復によって、特定部位に力学的ストレスが集中することで、徐々に発生します。
ランニングは一歩一歩の負荷は小さく見えても、1回の練習で数千回、月単位・年単位では何十万回と繰り返されます。
そのため、わずかなフォームの乱れでも、
にストレスが蓄積していきます。
重要なのは、「どこが弱いか」ではなく、「どのような走動作で、どこに負荷が集中しているか」です。
ランニング障害の予防とは、痛みの出た部位を見ることではなく、その原因となっている走動作を見ることから始まります。
STEP 2:走動作観察は位相と連続性で見る

走動作を評価する際に欠かせないのが、位相の考え方です。
走動作は主に、
に分けて観察します。
まずは一つの位相にしぼって観察することで、関節や骨盤、体幹の動的アライメントの問題が見えやすくなります。
次に重要なのが、位相をまたいだ連続性です。
ランニングは一瞬の動作ではなく、連続した運動です。
これらがどのようにつながって動いているかを観察します。
特に重要なのが、重心が前後・左右・上下にどう移動しているかの推測です。
重心は直接見えませんが、頭部の位置や骨盤・体幹の傾きから十分に読み取ることができます。
STEP 3:走動作の特徴から力学的ストレスを読み解く

走動作の特徴が把握できたら、次は力学的な視点です。
具体的には、
を推測します。
例えば、
股関節が十分に使えない走動作では、膝関節や足関節への負担が増えやすくなります。
この視点は、
「なぜ今そこが痛いのか」を説明するだけでなく、まだ痛みが出ていない部位を守るための予防にも直結します。
STEP 4:走動作は内的要因 × 外的要因で変化する

走動作は、身体機能だけで決まるものではありません。内的要因と外的要因の両方が影響します。
内的要因
- 筋力・筋機能
- 関節可動域
- 関節安定性
- 足部機能
外的要因
- 上り坂・下り坂
- 路面の傾斜
- カーブ走
- シューズ
例えば、カーブ走では、左右で下肢の役割が変わり、動的アライメントにも左右差が生じやすくなります。
外的要因への対応が不十分なまま走り続けると、改善したはずの障害が再発するケースも少なくありません。
STEP 5:問題点は動作分析と検査で絞り込む

走動作の問題点を正確に把握するためは、
といった項目が欠かせません。
映像分析を用いることで、関節角度や姿勢変化を客観的に確認できます。
さらに加速度計を用いれば、上下動や左右方向のブレといった、目視では分かりにくい要素も定量化できます。
これにより、介入の即時効果や経時的変化を把握することが可能になります。
STEP 6:予防と再発予防のゴールは「動作の持続」

ランニング障害の予防で最も重要なのは、一時的に良くすることではありません。
これらはすべて、好ましい走動作を獲得し、それを持続させるための手段です。
ランニング再開時は、
することで、接地時の衝撃や筋・腱への負担を抑えます。その後、段階的にストライドを広げ、走速度を高めていきます。
最終的なゴールは、良い走動作を意識しなくても維持できる状態です。
まとめ
ランニング障害の本質は、「身体の弱さ」ではなく、走動作によって生じる力学的ストレスの積み重なりにあります。
そのため、痛みの出た部位だけに注目して、
筋力や柔軟性を改善するだけでは、走動作が変わらなければ再発を防ぐことはできません。
走動作を理解し、身体機能と路面やシューズといった環境の両面から整えること。そして、好ましい走動作を持続できる状態をつくることが重要です。

それが、ケガなく、長く走り続けるための最も確実な方法です。
参考文献
- 岡戸敦男.『ランニング障害の予防と理学療法』.日本臨床スポーツ医学会誌.2020,28(2),p.237-239.


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