「5000mを速く走る選手は、どんな“接地”で走っているのか?」
ランナーなら一度は考えたことがありませんか。後足部接地(ヒールコンタクト)がいいのか、前足部接地(フォアフット)に変えるべきなのか。実際、接地に関する情報は溢れていますが、科学的に「5000mではどうなっているのか」は意外と知られていません。
本記事では、ランニングを研究している理学療法士 × ランニングアドバイザーの視点から、373人の男子5000mランナーを対象にした研究を基に「速い選手の接地の特徴」をわかりやすく解説します。
結論から言うと、5000mでは約8割が後足部接地で走っています。しかし、速い選手ほど前足部・中足部接地が増え、接地時間が短いほどタイムは速くなるという傾向がありました。
この記事を読むことで、あなたが『今の接地のままで良いのか』『どのフォーム改善が最も効果的なのか』がクリアになります。

5000mの走りを効率よくアップデートできるはずです。
STEP 1:研究の概要をつかむ

対象
男子5000mを走る選手 373人(高校生252人、大学生・一般121人)を対象とし、記録は14分07秒10〜20分38秒73。
撮影地点
- 1000m(序盤)
- 3000m(中盤)
- 4600m(終盤)
いずれも中間走で、各地点をサイドから高速度カメラで撮影。
解析内容
- 接地パターン:前足部接地(FFS、フォアフット)/中足部接地(MFS、ミッドフット)/後足部接地(RFS、ヒールコンタクト)
- 接地時間(接地〜離地の時間)
- ピッチや身体の角度、速度との関連も解析に利用
STEP 2:5000mでの接地パターンの分布

分布を整理すると以下の通りです。
後足部接地(RFS)が一番多い
- 後足部接地(RFS):74.2%
- 前足部接地(FFS):12.1%
- 中足部接地(MFS):少数
- 接地が地点ごとに変化した選手:13.7%
つまり、約8割が後足部接地(RFS)で走っていました。
ポイントは、市民マラソン(特に長距離)では約9割以上がRFSである一方、1500mのようなスピード系種目ではFFSやMFSの割合が増えると言われています。
5000mはそのちょうど中間に位置するため、RFSを中心にしつつ、非後足部接地も一定割合存在する「ハイブリッド的特徴」を示したといえます。
STEP 3:速い選手ほどFFS・MFSの割合が高く、状況に応じて接地パターンを柔軟に変えられる

選手をタイム帯で分けると、接地パターンは大きく変わりました。
14分台(最速層)の接地パターン
- RFS(後足部接地)の割合は依然高いが、下位層と比べるとFFS(前足部接地)・MFS(中足部接地)の割合が相対的に増えている
17分以降(下位層)の接地パターン
- 9割以上がRFS
- 非後足部接地はほぼ存在しない
結論として、スピードが出るフォームほど、前足部〜中足部接地が増えるという強い傾向が見られました。
さらに論文では、「上位層の選手は、レース後半になるほど接地が前寄りに変わる」という動的な特徴も示されています。
つまり、速い選手は“接地パターンを適応的に変えられる”というフォームの柔軟性も持っていると言えます。
STEP 4:接地時間が短いほど、5000mのタイムが速い

高速度映像から算出された接地時間でも差が明確でした。
- FFSとMFSはRFSより接地時間が有意に短い
- この傾向は3地点すべて(1000m・3000m・4600m)で確認
接地時間が短い時の特徴
- 地面に触れている時間が短い
- 伸張反射(SSC)を効率よく使える
- ピッチが上がりやすい
- 中間疾走の速度を維持しやすい
さらに論文では次のような相関も得られています。
接地時間が短いほど、5000mのタイムが速い。
つまり、5000mというスピード持久力の種目では、接地パターンそのものより「接地時間」が直接的なパフォーマンス要因になっています。
STEP 5:どの接地パターンでもケガのリスクはある

よくある誤解として、「前足部接地はケガを減らす」という単純化された意見がありますが、実際の研究はもっと複雑です。
FFS(前足部接地)での影響
- 踵の衝撃は小さい傾向
- 下腿三頭筋・アキレス腱への負荷が大きい
- シンスプリント・アキレス腱障害の報告あり
RFS(後足部接地)での影響
- 膝の衝撃が大きくなる傾向
- 膝蓋大腿関節痛(ランナー膝)との関連が指摘される
つまり、どの接地に明確な優劣はない。
また今回の研究でも、「速い選手の接地=ケガしにくい接地」という結論には至っておらず、むしろ身体のコンディションや筋力との相性が重要であることが示唆されています。
STEP 6:この研究から分かる“実践的示唆”

このデータから言えるのは、5000mという競技特性が「中距離のスピード」と「長距離の持久力」の両方を求めるため、スピードに必要な“接地の短時間化”が自然と前足部寄りの接地を生みやすいという考え方です。
STEP 7:ランナーはどう活かすべきか?

以下は専門的知見と先行研究を踏まえた実践ポイントです。
無理に接地を変える必要はない
筋力・柔軟性・ランニング歴・ケガ歴によって最適は変わる。無理にFFSに変えるとアキレス腱を痛めるケースも多い。
スピード練習では自然に接地が変わる
レペティションやインターバルでは重心位置が前に出るため、気づかないうちにMFS〜FFS寄りになるのは正常なメカニズム。
接地より“接地時間”を意識する方が効果的
- 真下での接地
- 骨盤の前傾
- 体幹の引き上げ
- ピッチ180前後
こうしたフォーム要素が整うと、接地は自然と最適化される。
ケガ部位に応じて接地を微調整するのは有効
- アキレス腱が弱い→過度な前足部接地は避ける
- 膝に負担が出やすい→RFSを減らし、MFSを増やす工夫も可能
- ふくらはぎの張り→ピッチ調整や骨盤位置の調整で改善
ふくらはぎに負担をかけない方法について詳しく知りたい方はこちら!
まとめ

5000mはスピード持久力が最大限に要求される種目です。
今回の研究から導けるポイントは次の通りです。
結局のところ、速い選手は“自然と最適な接地”に変化しているだけというのが今回の研究が示した本質です。
接地は「変えるもの」ではなく身体の使い方が整った結果として“変わるもの”。

あなたのランニングにも必ず役立つ知見になるはずです。
参考文献
後藤晴彦,鳥居俊.『陸上競技5000mにおける接地パターン』.日本臨床スポーツ医学会誌.2018,26(1),p.135-143.


コメント