「なぜ厚底カーボンシューズを履くと、同じ力でもより速く走れるのか」マラソンや長距離ランニングを続けているランナーなら、一度は疑問に思ったことがあるはずです。街中で見かけるランナーのフォームや、レースでのタイム差を見て、「自分も同じように速く走れるのだろうか」と考えたことはありませんか。
本記事では、ランニングを研究している理学療法士 × ランニングアドバイザー の視点から、丹治ら(2023)の研究をもとに、厚底カーボンシューズがランニングエコノミーをどのように改善するのかを科学的に解説します。研究では、大学の長距離ランナーを対象に、V̇O₂maxや地面反力、筋活動、関節の動きなどを総合的に測定し、シューズが効率的な走りをどのように助けるかを分析しました。
その結果、厚底カーボンシューズを使用すると、ランニングエコノミーが平均で約6%向上することが確認されました。ただし、すべてのランナーに同じ効果があるわけではなく、足首や膝の使い方によって恩恵の大きさには個人差があります。
この記事を読むことで、自分の走りに合ったシューズの選び方や、レース・トレーニングでの活用法、さらにはケガ予防のポイントまで、実践的に理解できます。

科学的根拠に基づいた知識を取り入れることで、無駄な力を使わず、より効率的に速く走る方法が見えてきます。
Step 1:この記事の読みどころ

日々の練習やシューズ選びにどう活かせるかも紹介します。
最新の厚底カーボンシューズが「なぜ速く走れるのか」丹治ら(2023)の研究では、呼吸・力・動作・筋活動といった多角的な視点から、この疑問を科学的に検証しています。
この記事ではその内容をもとに、シューズがランニングエコノミーをどのように改善するのか、またランナーによって効果が異なる理由についても詳しく解説します。
Step 2:研究の概要

対象者
大学の長距離ランナー10名を対象
比較条件
厚底・高反発素材を備えた最新型シューズと、従来構造のシューズを比較。
測定項目
330m/min(時速19.8km)でのランニングエコノミー、V̇O₂max(最大酸素摂取量)、地面反力(フォースプレートによる測定)、3Dモーション解析による関節角度、表面筋電図(sEMG)による筋活動など、多角的に評価を実施しました。
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試験方法
ランダム化クロスオーバー方式を採用し、両方のシューズを順番を入れ替えて測定。測定間隔を十分に確保して影響を排除し、統計的手法によって条件間の差を分析しました。
強みと制限
呼吸、動作、筋活動までを包括的に評価しており、シューズの性能を多面的に検証できた点が強みです。一方で、フォースプレートのノイズの影響により、横方向や前後方向の力の精度がやや低下した点が制限として挙げられます。
Step 3:結果はランニングエコノミーが改善

- 厚底カーボンシューズを着用した場合、ランニングエコノミーが平均で約6%改善しました、一方で、V̇O₂maxには有意な差が認められませんでした
- ステップ頻度(ストライドピッチ)、接地時間、筋活動量には明確な違いは見られませんでしたが、足首の動き、特に背屈と底屈の角度にはシューズの影響が見られました
- さらに、効果の高かったランナー(高恩恵群)は、支持期に足首がやや背屈し、股関節をより屈曲させる動きを示しました。一方、効果の低かったランナー(低恩恵群)は、膝がやや内向き(内旋位)になる傾向があり、反発力を十分に活かせていないことが示唆されました
Step 4:なぜ効率が上がるのか

① ミッドソール素材の反発力
最新のフォーム素材は、地面を押したエネルギーを効率よく跳ね返す性質を持っています。その結果、同じ速度で走っても必要なエネルギー消費量が減り、ランニングエコノミーが向上します。
② カーボンプレートの剛性
プレート構造がシューズ全体のたわみを抑え、足が前に進む推進方向の力を逃さず伝えます。これにより、接地から離地までの動作がスムーズになり、無駄なエネルギー損失を防ぎます。
③ 足首とアキレス腱の連動
足首がやや背屈した姿勢では、アキレス腱に弾性エネルギーがたまりやすくなります。シューズの反発力と腱のバネの働きが合わさることで、効率的な推進が生まれます。
④ 個人差の要因
膝が内向きになる、あるいは足のねじれが大きいランナーでは、地面反力が直線的に伝わりにくくなります。このような場合、反発力の方向がずれ、シューズの性能を十分に引き出せない可能性があります。
Step 5:実践での使い方

レースでは
厚底カーボンシューズを使用し、推進力とランニングエコノミーの向上を最大限に活かすことができます。
トレーニングでは
従来型シューズも併用し、アキレス腱や足部のバネ機能を維持することが大切です。
適合チェック
走行中に膝が内向きになる人、または足のねじれが強い人は、シューズとの相性に注意が必要です。必ず実際に走ってみて、負担のかかり方を確認することが推奨されます。
慣らし期間の目安
レースの4〜6週間前から短い距離で導入し、徐々に距離を伸ばしていくのが理想的です。
Step 6:ケガのリスクと長期的な影響

厚底シューズを継続的に使い続けると、接地衝撃が吸収されやすい反面、膝や股関節周囲の筋群に負担が偏ることがあります。また、アキレス腱や足底筋群の伸び縮みを使う機会が減るため、バネ機能の低下や筋バランスの変化を招くおそれもあります。
そのため、週の中で「従来型シューズで走る日」を設けることが、ケガ予防にもパフォーマンス維持にも有効です。
Step 7:効果を受けやすいタイプ・受けにくいタイプ

効果を受けやすい人
- 足首が自然にやや背屈している
- 膝や足のねじれが少ない
- アキレス腱のバネをうまく使える
効果を受けにくい人
- 膝が内向きになりやすい
- 足のねじれが強い
- 膝やアキレス腱にケガの既往がある
Step 8:今後の課題

今後は、地面反力の解析精度を高める技術的改良、被験者数を増やした検証、屋外での実走データの取得、長期的なトレーニング効果の追跡などが求められます。
まとめ
丹治ら(2023)の研究では、厚底カーボンシューズの使用によってランニングエコノミーが平均で約6%向上しました。
一方で、V̇O₂maxの向上は確認されず、シューズの効果は個人の動作特性に左右されることが示唆されました。

練習では従来型シューズも活用し、反発力とバネ機能のバランスを取ることが重要です。
参考文献
- 丹治史弥, 他. 『カーボンファイバープレート内蔵厚底ランニングシューズによるランニングエコノミーへの影響』. ランニング学研究. 2023, 34(1・2), p.1-12.


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