フルマラソンに挑戦するとき、「どのくらいのペースで走れば最後まで疲れずに走れるのか」「糖質と脂肪、どちらをエネルギー源として優先すべきなのか」と迷ったことはありませんか?特に長距離になるほど、序盤で飛ばしてしまった結果、後半で力尽きてしまうランナーは少なくありません。
本記事では、ランニングを研究している理学療法士 × ランニングアドバイザーが、科学的根拠に基づき、フルマラソンを効率よく走るためのエネルギー戦略や心拍数管理の方法を詳しく解説します。結論としては、長く楽に走るためには「脂肪を主なエネルギー源として使える身体」を作ることが最も重要です。
この記事を読むことで、糖質の枯渇を防ぎつつ脂肪を効率的に燃やす走り方を身につけられ、完走の可能性を高めるだけでなく、走り終えた後の疲労感も軽減できます。

これからのランニングがもっと快適で、楽しいものになるはずです。
ステップ 1:フルマラソンに必要なエネルギー量を理解する

ランニングの消費カロリーは簡易的に以下の式で計算できます。
1kmあたりの消費カロリー ≒ 体重(kg) × 1kcal
体重50kgの人の場合、フルマラソン(42.195km)を走ると、
50 × 42.195 ≒ 約2,109kcal
つまり、マラソンを完走するだけで約2,100kcalが消費される計算になります。
ステップ 2:体内に蓄えられたエネルギー源は主に糖質と脂肪

ランニングにおいて、糖質と脂肪のどちらのエネルギーを優先的に使うかが、重要です。
糖質だけではフルマラソンを走るにはエネルギー不足
体内に蓄えられる量はおよそ300g。
糖質は1gあたり約4kcalなので、
300g × 4kcal = 約1,200kcal のエネルギーを備えていることになります。
ただし糖質は短時間・高強度の運動で主に使われ、糖質だけではフルマラソンを走るには明らかに不足します。
脂肪を効率良く使用することが重要
例えば体重50kg・体脂肪率20%の場合、脂肪量は約10,000g。
脂肪は1gあたり約9kcalなので、
10,000g × 9kcal = 約90,000kcal ものエネルギーを持っています。
脂肪は長時間の運動に有効ですが、強度が高くなると使用しづらいという特徴があります。脂肪を効率よく使う走り方が必須になります。
ステップ 3:糖質と脂肪の使われ方を理解する

運動強度によって使用するエネルギー源は変わります。
乳酸閾値(LT値)付近で使用するエネルギー源が変化する
乳酸閾値(LT値)は、体内で乳酸が急激に蓄積し始めるポイントです。
閾値を超えると筋肉に乳酸が溜まり、疲労でパフォーマンスが急激に低下します。
- LT値以上の強度(乳酸閾値を超える) → 糖質がメインのエネルギー源
- LT値以下の強度 → 脂肪がメインのエネルギー源
長時間のランニングでは脂肪をエネルギー源として使用する必要がある
乳酸が蓄積すると
- 酸素供給不足でエネルギー効率が悪化
- 筋肉疲労により長時間の運動が困難
- 心拍数急上昇、呼吸が苦しくなる
長時間楽に走るには、脂肪を主エネルギーに使える身体作りが重要です。
ステップ 4:最大酸素摂取量と持久力・脂肪使用の関係

脂肪を効率よく燃やすには、最大酸素摂取量(V̇O₂max) がカギです。
最大酸素摂取量(V̇O₂max)とは?
- 最大酸素摂取量は1分間に体重1kgあたり消費できる酸素量(ml/kg/min)であり、高いほど酸素使用効率が良く、持久力が向上します
- エリートランナー:80 ml/kg/min以上
- 一般成人:35〜50 ml/kg/min程度
V̇O₂maxと乳酸閾値、脂肪使用の関係
V̇O₂maxが高いと乳酸閾値(LT値)が遅れます。
これは、より速いペースでも乳酸が溜まりにくく、疲労しにくい状態を作れることを意味します。
この状態では、運動強度が上がっても糖質だけに頼らず、脂肪を効率的にエネルギー源として使うことができます。
その結果、長時間にわたって一定のスピードを維持しやすくなり、マラソンや長距離ランニングでのパフォーマンス向上につながります。
ステップ 5:V̇O₂maxの測定方法

CPX(心肺運動負荷試験)を実施する
CPX(心肺運動負荷試験)は、運動中の心肺機能を精密に評価できる方法です。精度は非常に高い一方で、費用や時間がかかるというデメリットもあります。
CPX(心肺運動負荷試験)について詳しく知りたい方はこちら!
簡易的な推定方法
クーパーテスト
- 12分間で走った距離から推定
- V̇O₂max(ml/kg/min) = (12分間で走った距離 [m] − 504.9) ÷ 44.73
スマートウォッチやアプリ
近年では、心拍数やランニングペースを基にV̇O₂maxを推定する機能が付いたデバイスが普及しています。
ステップ 6:V̇O₂maxを向上させるトレーニング例

以下のトレーニングは一例です。
インターバルトレーニング
・3〜4分を速めのペース(最大心拍数の90〜95%)で走る
・3分間を軽いジョグまたは歩きで回復
・4〜6本、週1〜2回
ロングラン
・10〜20kmを会話できるくらいのゆっくりしたペース(最大心拍数の60〜70%)で走る
乳酸閾値(LT値)走
・20〜30分を「ややきつい」と感じるペース(5〜10kmレースペース前後)で走る
ステップ 7:心拍数や自覚症状でトレーニング強度を決める

最大酸素摂取量(V̇O₂max)は把握することが難しいため、心拍数や自覚症状でトレーニングの負荷量を決定します。
最大心拍数(HRmax)の60〜80%で脂肪がエネルギー源として使用される
(予測)最大心拍数(HRmax)=220 − 年齢
例:40歳の人の場合は → 220-40=180 bpm
脂肪がメインのエネルギー源のゾーンは、60〜80% HRmax=108〜144 bpm
ややきつい位の自覚症状で脂肪がエネルギー源として使用される
- ボルグスケール(RPE)6〜20スケールを使用
- 「ややきつい」程度(RPE13) → 心拍数約130 bpm
- 心拍計がなくても自覚症状で管理可能
まとめ

効率的に脂肪を使える身体を作ることで、フルマラソン完走だけでなく疲労感の軽減や次回のランニングへのモチベーションアップにもつながります。
参考文献
- 中野ジェームズ修一.『マンガでわかる新しいランニング入門』.池田書店,2019.


コメント